2016年9月30日

「作家」としての生き方。日々の中で大切にしていること。


OB・OGからのメッセージ。

今回ご紹介する卒業生は、
作家として活躍する小林真理子(こばやし・まりこ)さんです。

小林さんは、hamabiの油画コース出身で、
東京藝術大学の大学院を修了されています。
現在はhamabiの油画コース講師として、
後輩たちの実技指導にも携わってくれています。

今回は、
「大学(大学院)ではどんな制作や活動をしていたのですか?」
「作家として生きていくってどういう感じですか?」
という話題に的を絞り、お話を伺いました。



「そのいつかを待ちながら」 F40号 キャンバス・白亜地・油彩



Q.東京藝術大学ではどんなことを学んでいたのですか?

小林:
学部1年~4年の間は自身の絵画制作を中心に、学年ごとに異なる実技のカリキュラムが組まれていましたので、それにも取り組んでいました。絵画だけではなく、現代美術や壁画、版画など様々な分野の先生がいらっしゃったので、実習やゼミ、イベント運営、集中講義などを通して、自分の制作の方向性について多角的に考える機会を得られたと思います。教職と学芸員の資格取得のための授業も履修していました。

また、絵具や支持体など、絵画を支える素材や道具、技術については、予備校時代から特に関心があったので、油画技法・材料研究室の先生の研究のお手伝い(ラピスラズリからの天然ウルトラマリンの抽出)などもしていました。材料とそれを扱うための技法を学ぶことは、自分の絵への向き合い方を見つめなおすことでもありました。ただ描きたいものを描けばいいということではなく、材料や技法に助けてもらっているのだということ。また、その特性や弱点をうまく利用して自分の制作に結び付けることの大切さを学びました。



Q.大学院ではどのような研究をしていたのですか?

小林:
大学院では、油画技法・材料研究室に進み、修士の2年間と研究生の1年間を研究室で過ごしました。お互いの制作について話し合うゼミのほか、技法書制作に使用する写真の撮影や支持体制作、黄金背景テンペラ画の制作などを行いつつ、修了制作に向けて取材や制作、展示(個展やグループ展)などを行っていました。

ほか、新潟県の妙高高原や、群馬県のみなかみ町など、大学や研究室が交流事業を行っている地域に行き、イベントの講師や滞在制作、展示を通して、それぞれの場に関わる方々と接する中で、美術にできることは何か?ということについて考えるようにもなりました。

また、いわゆる授業やカリキュラムとは違う場での経験についてですが、美術学部敷地内のギャラリーショップでの経験からも大きな影響を受けています。学部2年から7年間、スタッフとしてアルバイトをしていましたが、様々なジャンルの作家の作品を扱うのは勿論のこと、来店されるお客さんと接する中で、いかに美術や作り手側が「作品を見に来てくれる人たち」「美術が好きな人たち」に支えられているかを知りました。

作品をただ作って展示して終わり…専門知識がある限られた人だけに向けての発表…だけではなく、もっと日常的に作品を見てくれる人たちの感性にも向き合いたいと思えるようになったのは、この体験から来ていると思います。



個展  『めぐる氣の色、眩しさを織る』での作品展示風景



Q.作品を作るとき、こだわっていることはありますか?

小林:
私は、光や眩しさ、儚さを感じるもの、生命力や記憶、言葉などを手掛かりに作品を制作しています。今は具象と抽象の間を行き来するような作品を作っていますが、もともとは植物や風景など、かたちのあるものを具体的に描いていました。そこから、より自分のテーマに近づけるため、あえて光のかたちそのものだけで作品を作れないかと考えるようになりました。



Q.作家として絵を描いていくってどんな感じですか?

小林:
作家活動をする中で嬉しいのは、自分が表現したいことを、描くことを通して作品の上に出せた時です。また、作品を発表した時に、作品を見てくれた誰かと話すことや、相手の感覚に共感できることも嬉しいですね。絵を通して人や場との繋がりが生まれたり、そこで得た言葉に反応することが、次の制作に繋がっていると感じています。

作家としてのスタンス(作家一本か、他の仕事と並行しながら制作を続けるか)は人それぞれだと思いますが、作ったものから答えを見出し、次の目標や課題を考えていくことは、作品の内容や活動のスタイルを問わず重要だと思います。

限られた時間をどのように使うか?作家としてどう生きるのが最も自分に合っているか?など、考えすぎて壁にぶつかることもありますが、たとえ挫折してもゼロからまた挑戦して、先に進むきっかけを見出せると信じて活動していきたいと考えています。



個展  『めぐる氣の色、眩しさを織る』での作品展示風景



Q.いま美大を目指している高校生にアドバイスを!

小林:
「毎日描いていればどうにかなる」のではなく、一旦自分をゼロにして、知らないものを知ろうとすることが大切だと思います。私自身、「特別な才能があるわけでもない今の自分」を受け入れ、挫折し、絵をやり直すことが全ての始まりでした。皆さんも、日常の中での小さな発見や感動を大切にし、他の誰でもない自分を育てていく気持ちがあれば、受験に限らず大学やその先の活動で、自分をぶらさずに後悔しないものが作っていけるのではないかと思います。




小林真理子(こばやし・まりこ)
小林真理子(こばやし・まりこ)
作家。東京藝術大学大学院修了。作家として作品の制作・発表をする傍、hamabiの油画コースの講師、中学校での美術教諭を担当するなど、美術に関わる様々な分野で精力的に活動を続けている。


撮影・取材協力:かわかみ画廊





(インタビュー:2015年10月)